11月にワタリウム美術館(http://www.watarium.co.jp/lec_kinder/)にて、小学生に向けて食のワークショップを行うことになった。
小学生に向けて…なかなか難しいお題である。
先方からの要望は、内容はシンプルに!
まず最初に思ったのが、本物の味を知ってもらいたいということ。
そして日本ならではのものであること。
そこで思いついたのが、和食のだし。
子供たちの中には、鰹節の塊を目にしたことも無い子も多いのではないだろうか。
3年程前、お店のオープニング準備で鰹節を探していて、晴美の鰹節問屋街まで出掛けた。
そこで出逢ったのがタイコウさん(http://www.taikoban.info/)だった。
枕崎のこだわりの鰹節のみを扱う問屋だった。
社長、稲葉さんのお話を聞いていて鰹節の世界の深さに感嘆しながらも、値段的にお店で使うことは難しく、お取り引きは出来なかった。
でも、オープンしてしばらくしてから、ふらりと稲葉さんが現れた。
晴美の問屋街まで何も知らずに飛び込んで来た私が面白かったそうだ。
一度使ってみなさい、と最高級の本枯れ節と鰹節削り器を置いて、ウィスキーを2杯呑んで(!)去って行かれた。
見よう見まねで削ってみたものの、歯が立たず、実はそのまま家に置かれたままだった。
あれから3年…
タイコウさんの出汁取り教室の情報を得て、ワークショップのことも頭にあり、参加の申し込みをした。
稲葉さんは相変わらずエネルギッシュで、鰹節一筋で仕事をしてきた職人としての誇りを感じた。
私のことまで覚えていてくださった(涙)。
教室では、鰹節の出来るまでの説明から、削り方、削りたての出汁で作るお吸い物、削り節の出汁の味比べ…
何百回と出汁を取ってきたにも関わらず、まさに目から鱗の状態だった。
最高級の本枯れ節で取る出汁は、削った状態が粉状であろうが、そんなに繊細に扱わなくとも金色に透き通る、最高の出汁が取れるのだ。
私がこれまで習ってきていた出汁の取り方の常識は当てはまらなかった。
本物ってすごいな。
それ以来、あの頂いた本枯れ節と削り器を日々愛用している。
3年前の本枯れ節でも美味しく出汁がひけるということもまた驚きだ。
この私が感じた感動を同じように子供たちに伝えられるだろうか?
初めて味わうかもしれない鰹節の出汁の味を、子供たちはどんな風に感じるだろうか?
日本が誇る食文化を、頭ではなく五感で感じ取ってもらえるといいな。